「有馬人形筆のからくりの秘密」と林溪寺の梅「未開紅」
有馬人形筆 灰吹屋西田筆店

「有馬人形筆のからくりの秘密」と林溪寺の梅「未開紅」

今回の「有馬ナビ」では、有馬の名産「人形筆のからくりの秘密」と林溪寺の梅「未開紅」をご紹介します。

「灰吹屋西田筆店」へ!
金の湯から湯本坂を上ると、昔ながらの丸くて赤い郵便ポストがあります。そのポストからもう少し坂を上ったところに「灰吹屋西田筆店」があります。ここでは、有馬でしか手に入らない有馬人形筆が作られています。
有馬人形筆 灰吹屋西田筆店 赤いポスト



有馬人形筆は、有馬温泉を訪れる観光客にとても人気があります。その魅力の一つは、篠竹(しのだけ)の筆軸に色とりどりの絹糸が巻かれていて、美しくかがられているところです。
また、筆を持って文字を書こうとすると、軸の先端からピョコンとかわいい豆人形が飛び出し、筆を寝かせると軸の中に隠れてしまいます。
このようなカラクリ筆は全国で唯一つ有馬温泉だけにあるため、観光土産として売られる以外に、遠方からの注文もあるそうです。


有馬人形筆 灰吹屋西田筆店 マップ

有馬人形筆 灰吹屋西田筆店 マップ
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有馬人形筆 灰吹屋西田筆店
有馬筆を詠んだ歌
有馬筆を詠んだ歌
人形筆は、昔から、有馬の名産として有名なので、歌にも詠まれています。

有馬筆ひょいと出たる言のはも人形よりはめづらしきかな(本居宣長)

便りおくれと口では云えず、そっともたせる有馬筆
            (有馬音頭 作曲:中山晋平 作詞:西条八十)


有馬人形筆有馬筆の由来
奈良時代に、孝徳天皇は、お妃の宝皇女に御子がないのを嘆かれていましたが、有馬温泉に逗留されたところ間もなくご懐妊し、お生まれになったのが有間皇子であると古事記に記されています。
そんなエピソードからヒントを得て、1559年(永禄2年)、神戸の伊助という人が人形筆を考案したと伝えられています。
昔は現在の細筆と同じ体裁の筆軸でしたが、大正末期から何重にも絹糸を巻いた、色鮮やかな形になったそうです。
しかし、大正時代まで、4〜5軒あった人形筆作りの店も、今では灰吹屋西田筆店だけになりました。


有馬筆を作ろう!
有馬筆作り
現在は、六代目の西田光子さんとお嫁さんの明子さんが伝統を守っています。光子さんは、この道60年という大ベテランです。
23才で嫁いで来られた時に初めて人形筆を作り始め、見よう見まねで覚えたとお聞きしました。
すべて細かい手作業ばかりで、糸車をスルスルと回しながら、日本刺繍に使われる色とりどりの絹糸をとても素早く軸に巻いていきます。
14〜5色ある絹糸の中から、筆1本に対して、多いもので7色、少ないもので2色、選び出します。
まず、軸になる竹の両側の中心に印をつけ、1.5cmごとに絹糸を巻いていきます。

有馬人形筆 作業工程
細い絹糸4本を撚って1本の糸にして、その糸の先に糊をつけ、濃い色の糸から順に巻いていきます。
基本の模様は、市松、青海波、うろこ、矢がすりの4種類ですが、組み合わせと色を変えることで、多種多様な模様がいくらでも出来るそうです。
街で出会った様々な洋服や和服の柄にヒントを得て作った、光子さんオリジナルの柄を入れると人形筆の模様は100や200では利かないそうです。
青海波はお祝いの品として、また、うろこは魔除けとして珍重されています。基本の柄は、ごまかしが利かないので、作るのがとても難しいそうです。


有馬人形筆 作業工程
軸の模様を巻いた後、象牙でこすって、巻き跡をならしてから、人形を軸に仕込みます。
模様のきれいな方が正面になる様に、人形の顔の向きを合わせて、からくりを下から差し込みます。人形が7割くらい飛び出たら止めて、人形が動くかどうか確かめます。人形は石膏と小麦粉を1:1の割合で混ぜたもので出来ています。
竹ヒゴにつけて乾かした後、墨を浸した綿花に頭をつけていきます。
そして、一つ一つ顔を描き、着物を着せて、ニスを塗ります。形をつけた針金と重りを人形に糸で結びつけると、からくりが出来上がります。
このからくりは長い伝統のある特許のようなものなので、ご先祖から代々伝わってきた家伝の秘密だったのですが、光子さんが、せっかく面白い仕掛けだからと、すべて公表されたそうです。

最後に、穂先を削り、糊をつけて軸に差し込むと人形筆が出来上がります。細筆とセットになったものは習字が好きになる様にという願いが込められており、赤い着物の女人形と緑の着物の男人形がセットになった夫婦筆は、子宝授与の縁起物と言われています。

有馬人形筆の作業工程画像をクリックすると拡大表示がご覧いただけます。
軸竹の両側の中心に印をつける 軸にはしを差し込む 糸車から絹糸を4本縒り糸の先にのりをつける 軸に1.5センチ間隔に点を入れる 軸の端に3〜4回巻きつける ななめに巻き上げる
次は戻しながら巻く 濃い色の次に薄い色を交替に巻く 象牙でこすり巻き跡をならす からくりの人形をつくる 人形に絵付けをし、ニスをぬる 針金と重り、人形を糸で結ぶ
からくりの説明 からくりを下から軸に差し込む 穂先を削り軸に差し込む できあがり    

西田光子さんのお話
西田光子さんと龍泉閣スタッフ
このように、細かい手作業なのですが、光子さんの他に、息子さんやお嫁さんなど、7人ほどの方がお手伝いされています。すべての工程を一人ですると、一日に4〜5本しか出来ないそうです。
光子さんは主に絹糸を巻く工程を担当していますが、巻く作業だけに専念しても一日に15本くらいが限度です。
西田光子さんと龍泉閣スタッフ
「一つ一つ模様が違うからこそ、すべて"光子さんの宝物"に見えます。毎日、同じ手作業の繰り返しでも、いろんな人が訪ねて来られるので、人との出会いが一番楽しみです。」と話してくださいました。
有馬小学校の生徒さんも人形筆作りの体験学習にやって来て、からくりの秘密を知り、大喜びだそうです。
最近では、全国から注文があり、よその地方でも販売してはどうかというお話もあった様ですが、有馬に来ないと買えない、有馬に行ったら買おうと思ってもらえる様に、有馬以外の店には卸さないという方針を守っておられるとのことです。
西田光子さん
屋号の「灰吹屋西田筆店」について伺ってみましたが、光子さんにもはっきり分からないとのこと。
昔、ご主人に聞いたところでは、筆には油が付いているので、灰で油を取っていたところから来ているのではないかというお話でした。
今では一軒だけになりましたが、光子さんがお嫁さんに来られた頃は、西田筆店のあたりは筆屋町と呼ばれるほど筆屋さんがたくさんあったそうです。
私たち龍泉閣スタッフも、有馬でしか手に入らない、からくりの筆、「人形筆」をこれからも大切にしていきたいと思います。
 
「灰吹屋西田筆店」
  営業時間 9:30〜18:00  定休日:水曜日  Tel 078-904-0761



林渓寺の梅
「灰吹屋西田筆店」から、湯本坂をもう少し上ると林溪寺があります。
併設する有馬保育園の藤原先生に境内を案内していただきました。 
林渓寺
林溪寺は、1601年、落葉山の麓に池の坊法順が開基したと伝えられる浄土真宗大谷派の古刹で、江戸時代は東本願寺の別院として、「有馬御坊」と呼ばれていました。

温泉寺(薬師堂)や湯泉神社とともに子授けの寺として有名です。
1695年、火災により焼失し、再建されましたが、1753年に再び類焼し、落葉山の麓から谷中町(現在の上之町)に移されて、現在に至っています。現在の建物は、1754年に上棟しています。

林渓寺の梅
境内に「未開紅」という樹齢200年以上の紅梅があります。
この名称の起こりは、1781年、本山19世乗如上人(本願寺の門主)が有馬入湯の折に、梅の蕾の紅色が殊に深く、美しいのを見て名付けたものと言われています。
毎年3月下句になると、紅色の美しい八重の花が咲きます。古くから、この梅の実を食べると子宝に恵まれるという言い伝えがあり、別名「はらみの梅」、「にむしんの梅」とも呼ばれています。


[本尊]阿弥陀如来像 1651年の作
[宝物]親鸞上人絵像 1608年の作
     慈母観音(子授観音)中国より渡来、約300年前の作



龍泉閣スタッフ
今月の有馬ナビでは、伝統の人形筆について、ご紹介しました。
光子さん始め、西田筆店の皆様には大変ご協力をいただきまして、ありがとうございます。
2003/2/20(麻)

※このページは2003年2月に発行されたものです。
最新の有馬温泉と周辺観光地の情報『龍泉閣日記』をご覧ください。

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